社長の気持ちブログ
2019.07.17
旅楽コラム 第3回
くるま旅クラブ会報誌にコラムを書いてます。編集者の手違いで少しニュアンスの違う文章が掲載されてしまいました。
本当の文章はこちら
旅想論
第三回
『変わりつつある日本へ』
フリーウェイ110号を北に向かう、数マイル先の街が燃えている。時折爆発音とともに真っ黒いキノコ雲のような煙が立ち上る。ラジオの報道ではどうやら暴動が起きているらしい。大騒ぎだ!ヘリコプターが飛び回る。
1992年春、ロサンゼルスでの出来事である。
事の発端は白人の警官の集団がスピード違反をした黒人に殴る蹴るの暴行を加え、その様子が克明に撮影されたビデオが存在するのに、裁判では暴行にかかわった警官全員が無罪になったこと。なぜか白人の陪審員ばかりの法廷では黒人の訴えが通るわけもなく、だれが見ても不当な判決。
そのことに腹を立てた黒人の集団がサウスセントラル地区で暴れだし、無関係な白人に対して暴行を加え、エスカレートした人たちがスーパーマーケットなどから略奪を始め、その挙句、店舗に放火をするという暴挙に出た。街はいわゆる無法地帯と化してしまったのだ。
暴動を鎮圧する立場のロス市警は、自らが一番のターゲットとされ襲われる恐怖があったのか手を出すこともせずに遠くから傍観するのみ。暴動はさらにエスカレートしていく。日系人や韓国人の経営する店舗も襲われ、対抗する韓国人オーナーはピストルを撃ちまくる。街はまるで戦場と化した。
一週間もすると沈静化してはきたのだが、ロサンゼルスにはピリピリとした異様な空気が満ちていた。
アメリカの根本にある人種差別の感情。私もロサンゼルスに小さなオフィスを構え商売を始めた頃だったので、この事件にはいささか恐怖を感じた。それは黒人の暴動に対する恐怖というよりもこの街にある差別意識に対する恐れ。
当時ロサンゼルスに住んでいた黒人のすべてが暴力的なわけではない。私の周りの黒人の方たちは、まだまだ短い付き合いの中でもすごく親切に接してくれていた。しかし肌の色の違いで住む場所も違う、買い物をする店も選ばなければいけない、レストランで案内される席が違うなんてこともざらにある。
世界には人種間格差、人類の歴史が作り出した宗教や人種による断絶が根強く残っているということを知らなければならない。
海外での日本人は決して優位ではない、優位でないゆえに様々なことが見え、その地の人と対応するすべ(術)を常に考えることになる。外国で暮らすということはそういうことなのだ。
日本人であることの誇りはある。だが日本人であるが故に感じる疎外感のようなものがこびりついてはがせない。肌の色で優劣をはかることがそもそも間違っているはずなのに。
日本で生活している時の自分たちはどうだろう。見た目や人種で対応を変えてはいないだろうか、心のどこかで評価の対象が能力ではなく人種に偏ってはいないだろうか。
いまや日本にもたくさんの外国の方が来て一緒に暮らしている。島国に住む単一民族という誇り、それが心の壁になり多民族を受け入れる寛容さに欠ける部分があるのならば、我々自身も固定観念という殻を脱ぎ捨て、もっともっと多様な発想を持つべき時だと思う。
変わりつつある日本という国。令和という新時代に大切な一歩を踏み出すために。